“Welcome back!!” の感覚

もしもしの日常

ここでは、

もしもしが独り言をつぶやいています。

 

 

大学院生のとき、新学期の最初の授業でネイティブの教授が決まって言う言葉がありました。

Welcome back!!

当時、この言葉は私にとってどうにも違和感がありました。

というのも、大学院生だった時の私は、夏休みのような長期休みもわりと毎日のように大学の図書館に通っていました。

 

大学院生の常ではありますが、お金もなかったので長期旅行をするということもあまりなく、都内が実家だったため帰省する必要もありませんでした(後者は恵まれたことですが)。

だから、教授が “Welcome back!!” とテンション高めに迎えてくれても、帰ってきた感が全くありませんでした。

 

朝早くなくても「おはよう」と挨拶するのと同じように、慣用表現なのだからそういうものなのでしょうが、その言葉にずっとピンとこないまま私は大学という場所から離れました。

 

時を経て、ひょんなことからここ2、3年ほど、毎年のようにアメリカに行く機会ができました。

先月アメリカに行ったとき、学生数3万人ほどの総合大学の新学期の様子を目の当たりにしたことで、数年越しで “Welcome back!!” の感覚が腑に落ちた気がしました。

大学近くを歩く学生たちが、見知った顔を見つけるたびに猛烈に喜んで抱き合い、とても楽しそうに夏休みの報告をしあっていたのです。

 

国内外から学生たちの集まるアメリカのマンモス校では、多くの大学生は、夏休みの間に帰省や旅行で大学や大学寮を離れるのが常なのでしょう。

なるほど、これなら “Welcome back!!” だなあと思った次第です。

 

しかし、その後ちょっと考えて、うーむそれだけではないのかもしれないと感じました。

言葉を交わす彼らの様子からは、新学期の大変な授業が始まっちゃうけど、ここに戻ってこられて心底嬉しいぜ!というようなハッピーな雰囲気を感じたのです。

つまり、物理的・時間的距離を経てきたことだけではなく、大学という場所やそれに付随する人間たちのもとに「戻ってきたね!おかえり!」と表現できるほどの感情。

いわば、場所や人への愛着のようなものが、 “Welcome back”という言葉には含まれているんだろうなと理解し、腑に落ちたのです。

 

おそらく、大学院生だったの時の私は、そもそも新学期を迎えるのが嫌すぎて、全然ウェルカムじゃないやい!と独りで不貞腐れていたのでしょう。

 

家という私的空間だけはなく、大学や職場という公的なコミュニティで、 “Welcome back” という言葉を自然に使えること。

これは案外、健やかに生きるために必要なのかもしれませんね。